固定期間を経て靭帯の初期修復が始まったら、早期に計画的なリハビリへ移行します。2026年現在のリハビリプロトコルでは、「痛みが完全に消えるまでギプスで長期間固める」という旧来の安静至上主義は完全に否定されています。過度な長期固定は、大腿四頭筋の急激な筋萎縮や関節拘縮(膝が曲がりも伸びもしなくなる状態)を招き、復帰を大幅に遅らせる原因となるためです。
実際のリハビリテーションは以下のステップで進められます。
【第1段階:急性期(受傷直後〜2週)】
側方への動揺を制限するヒンジ付き装具を装着した状態で、早期から関節可動域訓練(ROM)を開始します。同時に、膝関節に負担をかけない「パテラセッティング(膝裏でクッションを押し潰す運動)」や「SLR(仰向けで脚をまっすぐ持ち上げる運動)」を行い、大腿四頭筋の神経筋再教育を図ります。
【第2段階:回復期(3〜6週)】
エアロバイク(固定式自転車)による低負荷の有酸素運動、クローズドキネティックチェーン(足を床につけた状態でのスクワットやレッグプレス)を導入します。ここで極めて重要なのが、内側側副靭帯の動的スタビライザー(補助的な安定装置)として機能する「内転筋群」および「股関節外転筋(中殿筋)」の徹底的な強化です。膝が内側に入る動作を股関節側で抑え込めるようフォームを再構築します。
【第3段階:機能的トレーニング期(7週〜復帰)】
直線ダッシュから、カッティング動作(方向転換)、サイドステップ、ジャンプの着地動作へと負荷を高めます。患側と健側の筋力比が90%以上に回復し、ファンクショナルテスト(片足ホップテスト等)をクリアすることが競技復帰の安全基準となります。
一方で、適切なリハビリを怠ったり、医師の許可なく早期復帰を強行したりした場合、極めて厄介な後遺症に直面します。
典型的な後遺症が「膝関節の慢性的な側方不安定性(緩み)」です。靭帯が伸びきった状態で瘢痕化してしまうと、走る・止まる動作のたびに膝の内側がパカパカと開くような不安定感が残り、半月板の二次的損傷や軟骨摩耗を加速させます。
さらに見逃せないのが「ペレグリーニ・スティーダ病(Pellegrini-Stieda lesion)」です。靭帯の付着部である大腿骨内顆に生じた血腫が石灰化・骨化してしまう障害で、膝の内側に頑固な圧痛と屈曲制限が残り、完治まで数ヶ月から1年以上の長期加療を余儀なくされるケースがあります。