同じ分量の調味料を使っても、「切り方」ひとつで仕上がりの味と食感はまったく異なります。包丁を入れる方向がピーマンの細胞壁に与える影響は、調理科学の観点からも明確に立証されています。
ピーマンの繊維は縦方向に走っています。この繊維に沿って縦に切ると細胞が破壊されにくく、苦味成分や水分が外に溶け出さないため、シャキッとした心地よい歯ごたえを維持できます。一方で、繊維を断ち切るように横向きに薄切りにすると、細胞が壊れて苦味や青臭さの成分が放出されやすくなりますが、そのぶん調味料の味が短時間で染み込みやすくなり、加熱後は驚くほど柔らかな口当たりになります。
「野菜の苦味に敏感な小さな子供向け」に作る場合は、あえて横切りにしてからしっかりと加熱し、めんつゆなどの甘味調味料を吸わせるのが効果的です。逆に、大人の晩酌のお供や食感を楽しみたい常備菜としては、縦切りで適度な歯ざわりを残す仕立てが適しています。