テレビの世界で圧倒的な実績を残した石井ふく子は、舞台演出家としても卓越した才能を発揮してきました。明治座、新歌舞伎座、東宝劇場などで数々のホームドラマ舞台を手がけ、劇場を満員の観客で埋め尽くしてきた歴史があります。
舞台の現場において彼女が何より大切にしてきたのが、キャストやスタッフとの「心のつながり」です。泉ピン子、長山藍子、中田喜子、野村真美、藤田朋子といった『渡鬼』メンバーをはじめ、歴代の出演者たちは彼女を「おかあさん」と慕い、強固な「石井組」を形成してきました。
私生活では生涯独身を貫いてきた石井ふく子ですが、孤独とは無縁の人生を歩んでいます。女優の三益愛子さんを母に持ち、実母と養母の間で育ったという複雑な生い立ちを持つ彼女だからこそ、「血縁だけが家族ではない」という強い信念を持っています。自分が手がける作品の出演者やスタッフ全員を我が子のように慈しむその姿勢が、半世紀以上にわたる熱い信頼関係の源泉です。