ここで情報空間における認知の歪みを検証します。なぜ人は、存在しているはずのコンビニを「閉店した」と思い込んでしまうのでしょうか。メディア心理学および情報拡散の観点から分析すると、3つの認知トラップが存在します。
第1のトラップは、前述した「五反田TOCビル」建て替え問題が引き起こした代表性ヒューリスティック(先入観による即断)です。ニュースメディアで連日のように「TOCビル解体」「TOCのテナントが立ち退き」と報じられた結果、一般消費者の記憶プールには「TOC=消滅した施設」という強固なラベルが貼り付けられました。「大崎のTOCビルディング」という別棟の現役オフィスビルであるにもかかわらず、脳内で無意識に「あの閉まったビルの中のローソンだから、もう無いに違いない」と論理が飛躍したのです。
第2のトラップは、Googleマップ等のユーザー投稿型プラットフォームにおける「一時的なフラグ誤認」です。ビルの定期清掃日や法定電気点検、年末年始などの休業日に訪れた一般ユーザーが「営業していない」という報告を投稿し、それがアルゴリズム上で「休業・閉業」と誤処理された時期がありました。現在はこの表示揺らぎも解消されていますが、検索エンジンのサジェスト欄に「ローソン TOC 大崎 閉店」というワードだけが亡霊のように取り残された形です。