テレビやSNSで報じられる著名人の40代後半での出産報道は、世間に極めて危険な「生存バイアス」を植え付けています。高度な特別医療、住み込みシッターの雇用、パーソナルトレーナーによる産後ケアを前提としたセレブリティの事例を、一般家庭の生活スケールと同列に語ることはできません。客観的な高齢出産のメリットとデメリットを整理し、認知の歪みを正す必要があります。
もちろん、高齢出産には揺るぎないメリットも存在します。20代にはない豊かな人生経験に基づく精神的包容力、感情のコントロール能力、そして一定のキャリアを築いたことによる発言権や職場での裁量です。子どもに対して感情的に怒鳴り散らさず、冷静に対話できる育児姿勢は、年齢を重ねた親ならではの強みといえます。
しかし、それを補って余りある構造的デメリットとして立ちはだかるのが、高齢育児の経済的負担と教育費のキャッシュフロー問題です。20代の親であれば、「給与所得のピーク(50歳前後)」と「大学教育費のピーク(子どもの18〜22歳)」が合致します。一方で、43歳で出産した場合、子どもが私立大学に通う時期には親は61〜65歳を迎えます。役職定年による給与カットや再雇用による収入激減期と、年間数百万円の学費負担が完全に重なる計算です。結果として、自分たちの老後資金を学費に充当せざるを得ず、「定年後破産」に転落するリスクが現実味を帯びてきます。