ファンの間で今なお熱く議論されるのが、緻密な伏線回収の考察と、悪役の常識を覆したエボルトの正体です。物語序盤で戦兎たちの後見人として優しく接していた喫茶店のマスター・石動惣一。その穏やかな笑顔の裏で、すべての惨劇を裏で糸引いていた地球外生命体エボルト(仮面ライダーエボル)であったという真実は、平成ライダー史上に残る衝撃的な裏切りでした。
エボルトは単なる強大な力を持つ侵略者にとどまりません。人の弱さや愛情を巧みに操り、戦兎の正義感を逆手に取って自らの進化の糧にしていく冷徹な狡猾さを持ち合わせていました。敵対しながらも時に共闘し、最後まで主人公たちを心理的に翻弄し続けたエボルトの絶対悪としての完成度は、物語の緊張感を最終局面まで途切れさせない最大の原動力となりました。
そして、ビルドのテーマである「科学の暴走と代償」を最も過酷に描いたのが、第21話「ハザードは止まらない」で初登場したラビットタンスパークリングを凌駕する漆黒の強化形態、ラビットタンクハザードフォームです。使用し続ければ自我を失い、敵味方の区別なく周囲を破壊し尽くす劇薬。戦兎はこの力を行使せざるを得ない極限状況に追い込まれ、その結果として北都の三羽ガラスの一人・青羽(仮面ライダーキャッスルハードスマッシュ)を意図せず死に至らしめてしまいます。
子供向け番組の主人公が「相手を倒してしまった」という事実に打ちひしがれ、激しい嘔吐感を覚えながら雨の中で震える描写は、戦うことの重みと兵器の恐ろしさを容赦なく突きつけました。なぜハザードフォームでなければならなかったのか――それは、戦争という極限状態において誰もが無傷の正義ではいられないという、脚本陣が掲げたリアリズムの徹底に他なりません。