DSオートモビルを語る上で避けて通れないのが、他の追随を許さない圧倒的な内装の高級感と、母体であったシトロエンとの明確な差異です。
DSの内装は、単なる移動空間ではなく「動くパリのラグジュアリーサロン」として仕立てられています。最高峰のナッパレザーに施された「ウォッチストラップ(時計の金属ベルト)」を模したシートステッチ、高級機械式時計の文字盤に用いられる伝統技法「クル・ド・パリ」を模したギヨシェ彫り加工のトグルスイッチ、さらにはエルメス出身の職人らが関わるステッチワークなど、細部への偏執的なこだわりは同価格帯のメルセデス・ベンツCクラスやBMW 3シリーズを遥かに凌駕する情緒的価値を放っています。
ここで多くの人が疑問に抱くのが、「シトロエンとの違い」です。歴史的にDSは1955年に登場したシトロエンDSに起源を持ちますが、2014年に独立ブランド化され、2015年以降は完全に別系統のラインナップとして展開されています。
開発思想の違いは明快です。シトロエンが「革新的でポップ、気取らない快適性と日常の実用車(コンフォート)」を追求しているのに対し、DSオートモビルは「フレンチ・サヴォアフェール(フランスの匠の技)を具現化した前衛的ラグジュアリー」を標榜しています。サスペンションのセッティングひとつ取っても、シトロエンがしなやかで柔らかいプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)でフワリと路面をいなすのに対し、DSはフロントカメラで前方の路面凹凸を先読みしてダンパーを電子制御する「DSアクティブスキャンサスペンション」を投入するなど、ハイテクとオートクチュールの融合を図っています。