伏見稲荷を訪れたなら、まず味わっておきたいのが神社と深いつながりを持つ歴史ある名物料理です。数ある食事処の中でもひときわ長い歴史を誇るのが、太閤秀吉が名付け親と伝わる1540年創業の老舗「祢ざめ家(ねざめや)」をはじめとする門前の食事処。ここで供される三大名物には、それぞれ稲荷信仰に根ざした深い物語が存在します。
主食として真っ先に挙げられる名物いなり寿司は、一般的な三角形の油揚げの中に、香ばしい麻の実(ヘンプシード)やごまを混ぜ込んだ酢飯を詰めるのが伏見稲荷流。噛みしめるたびにプチプチとした心地よい食感と上品な甘辛さが広がり、散策で程よく疲れた身体をじんわりと癒やしてくれます。
あわせて注文したいのが、関西風の澄んだ出汁が際立つきつねうどんです。丼を覆い尽くすほど大きな油揚げはお狐様の大好物とされ、職人が丁寧に炊き上げたジューシーな旨味が出汁へ溶け出し、最後の一滴まで飲み干したくなる奥深い味わいを誇ります。
そして、知る人ぞ知る名物として名高いのが雀(すずめ)の丸焼きです。かつて稲を食い荒らすスズメを退治し、五穀豊穣を祈願した名残から始まったとされる伝統料理で、甘辛い秘伝のタレを絡めて香ばしく炭火で焼き上げられます。骨ごとバリバリと噛み砕く独特の歯ごたえと野趣あふれる濃厚なレバーに似たコクがあり、添えられた粉山椒が肉の風味を鮮やかに引き立てます。冬季を中心にウズラやスズメが提供されており、歴史を舌で体感できる貴重な食体験として選ばれています。