産卵を確認した際、最もやってはいけない対応が「親メダカと同じ水槽に産卵床を放置すること」です。メダカには自身の卵や仔魚を認識して保護する親心は一切ありません。目の前にある動かない粒はすべて高カロリーなエサと見なされ、半日も経たないうちに親魚によって食べ尽くされてしまいます。したがって、産卵床の隔離タイミングは「見つけ次第、遅くとも産卵当日の夕方まで」が絶対防衛ラインとなります。
隔離容器を用意する際、多くの初心者が「魚のためにカルキ(残留塩素)を抜いた綺麗な水を使おう」と考えがちですが、これこそが大きな落とし穴です。卵の管理期間において、カルキを抜いた飼育水は雑菌やカビが爆発的に繁殖しやすい危険な液体に変わります。プロの現場では、あえて汲みたての水道水(カルキ抜き未投入)をそのまま管理水として使用する手法が広く定着しています。水道水に含まれる微量の塩素が天然の殺菌剤として働き、卵の殻を傷めることなく雑菌の初期増殖を強力に抑え込んでくれるからです。
さらに防カビ対策を万全にするツールとして重宝されているのが、メチレンブルー水溶液の使い方です。薬用量を守り、水が薄いスカイブルー(透き通る青色)に染まる程度に希釈して使用します。この染料系殺菌剤には、生きている有精卵を染めず、死んだ無精卵だけを真っ青に染め上げるという驚異的な特性があります。青く染まった卵を見つけたらピンセットやスポイトで即座に取り除けば、水カビの一次発生源を100%遮断できる仕組みです。
ここで議論になるのがメダカ卵の水換え頻度です。静置したままの水は水温上昇とともに溶存酸素が欠乏し、水質が悪化します。孵化容器が小型(1〜2L程度)の場合は、水道水またはメチレンブルー水溶液を用いて「毎日〜2日に1回、全量または半量」を換水するのが理想です。底に溜まったゴミや死卵の残骸を排出し、常に新鮮な酸素を卵に供給し続けることが、殻を破るための生命エネルギーを維持する秘訣です。