実山椒を仕込んだ多くの人が直面する最大の悩みが、仕上がりや保存中に実が茶褐色〜黒色に変色してしまう現象です。この実山椒塩漬け黒くなる原因は、果皮に含まれるポリフェノール化合物と酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)の働き、そして加熱後の空冷による酸化にあります。
実山椒の鮮烈なグリーンを損なわないためには、酵素の働きを完全に失活させ、クロロフィル(葉緑素)を安定させる科学的なアプローチが欠かせません。その鍵を握るのが、徹底した実山椒下処理アク抜きと、温度管理を徹底した実山椒色止め方法です。
具体的な工程としては、まずたっぷりの沸騰した湯に対して約2%の食塩を加え、実山椒を茹で上げます。茹で時間の目安は実の熟度によって異なりますが、指の腹で実をつぶしたときに少し力を入れて潰れる程度(約5〜7分)が最適です。加熱が足りないと酵素が残り、後から黒ずむ直接の原因となります。茹で上がった直後に氷水へ落とし、一気に中心温度まで下げる「急冷」を行うことで、鮮やかな緑色が確実に固定されます。
アク抜きの水さらし時間は、好みの辛味と痺れの強さに応じて調整します。近年の官能評価データや料理人の現場証言によると、1時間〜2時間程度の水さらしで十分にエグみが抜け、山椒特有の柑橘系の爽やかなアロマが最も引き立つ状態に仕上がります。半日以上水に晒し続けると、香気成分であるサンショオールやリモネンが水中に溶出してしまい、ただ辛いだけの抜け殻になってしまうため注意が必要です。