殿下が最も世間を揺るがしたのは、2000年代半ばに巻き起こった皇位継承問題をめぐる発言だった。男系男子による継承の伝統を堅持すべきとする立場から、月刊誌などで自らの見解を表明。皇族が政治的・制度的な議論に直接踏み込むことは異例中の異例であり、宮内庁内外で激しい賛否両論を巻き起こした。
しかし、その真意は単なる復古主義ではなかった。何世代にもわたり連綿と受け継がれてきた歴史の重みを軽視する拙速な議論に警鐘を鳴らし、国民的な熟議を促すための捨て身の直言だったのだ。皇室の存続基盤が揺らぐ危機感を誰よりも早く察知し、自らが矢面に立つ覚悟を決めていた殿下の姿勢は、皇位の安定継承が喫緊の課題となっている現在、改めて検証されるべき重要な歴史的証言となっている。