ネット上のレシピで散見される「大根と里芋を同時に面取りせず煮込む」「最初から強火で一気に煮詰める」といった手法は、一見手軽に見えますが仕上がりのクオリティを著しく落とす典型的な落とし穴です。
大根の皮付近には硬い維管束が集中しており、薄皮一枚を残した状態で煮ると、どれほど時間をかけても舌に筋っぽさが残ります。大根の皮は「もったいない」と感じるくらい厚めに剥き、剥いた皮はきんぴらやポン酢漬けに再利用するのが和食の合理的な知恵です。
また、「煮汁が沸騰したらすぐに醤油などの強い塩分を加える」のも避けるべきです。高濃度の塩分が最初から存在すると、野菜内部の水分が急激に外へ引き出されて細胞が締まり、結果として中心まで柔らかくなるのを妨げてしまいます。出汁と酒、みりん(または砂糖)で素材が8割方柔らかくなるまで煮てから、最後に醤油を加える「さ・し・す・せ・そ」の原則を守ることが、科学的にも最も理にかなっています。