寺島しのぶの名を世界に轟かせた決定打が、鬼才・若松孝二監督とタッグを組んだ『キャタピラー』(2010年)だ。日中戦争で両手両足を失い「軍神」として帰還した夫と、その夫を世話し、欲望を受け止め続ける妻・シゲ子の凄絶な日々を描いた問題作である。低予算、わずか数週間の過酷な撮影現場において、彼女は虚飾を一切剥ぎ取った生々しい性の営みと葛藤を演じきった。
国家の狂気と人間の業が交錯するこの作品で見せた鬼気迫る演技は世界中から絶賛を浴び、第60回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。左幸子、田中絹代に続く日本人女優として史上3人目の快挙を成し遂げ、彼女の「脱ぎ」が世界水準の芸術的表現であることを証明した。