プロのテーラーは指先の感覚だけで均一な糸足を作り出しますが、慣れない一般の人が目分量で糸を弛ませると、左右のテンションが狂い、不揃いで貧弱な糸足になってしまいます。そこで役立つ決定的な裏技が「つまようじ」をスペーサーとして挟み込む手法です。
一般的なつまようじの直径は約2.0〜2.3mmであり、これはスーツの前身頃や厚手シャツの前立ての厚みにほぼ合致します。より厚みのある冬物コートでは竹串(直径約3mm)を、薄手のブロードシャツなら厚紙の切れ端(約1mm)を挟むことで、初心者でも機械のように狂いのない高さを維持できます。
つまようじを活用した糸足形成のステップ
まず、生地の表側のボタン付け位置に小さな針目をすくい、玉結びをその繊維の隙間に潜り込ませます。ボタン穴の真下に玉結びが隠れる位置からスタートするのが、裏面を美しく仕上げる鉄則です。
次に、ボタンと生地の間に「つまようじ」を横から差し挟みます。つまようじを跨ぐようにしてボタンの穴へ針を通し、各穴を規定回数縫い留めていきます。この段階では、つまようじの胴体部分に糸がぴったり密着するよう、しっかりとテンションをかけて引き締めて構いません。
所定の回数を縫い終えたら、裏から針を生地の表側(ボタンと生地の間)へと引き出します。ここで慎重につまようじを引き抜くと、正確に2mm強の隙間(糸の束)が生まれます。
この浮いた糸の束に対し、根元からボタン側へ向かって針についた糸を3〜4回きつく巻き付け、強固な「柱」を形成します。巻き終えたら、糸足の根元の輪に針をくぐらせて引き締める「引き結び」を1回施し、針を再び生地の裏側へ引き抜いて、小さな玉止めを作って根元で切断します。