本作のクライマックスにおいて、帆高は極限の二者択一を迫られます。「天気の巫女」として人柱となり、自らの命を捧げることで東京の異常気象を鎮めた陽菜。彼女が消えたことで、街には数か月ぶりの眩しい青空が戻っていました。
しかし、代々木の廃ビルの鳥居をくぐり雲の上の世界へ飛び込んだ帆高は、祈る陽菜の手を掴み、叫びます。
「天気なんて、狂ったままでいいんだ!」
このラストシーンにおける帆高の選択こそが、新海誠監督が従来のセカイ系構造を鮮やかに転覆させた瞬間でした。「世界全体の調和のために個人の犠牲を強いる構造」を真っ向から拒絶し、たとえ世界が破滅しようとも、自分にとってかけがえのない陽菜の手を取ったのです。
その結果、東京は2年半以上にわたり雨が降り続け、下町一帯が水没して海へと戻っていきました。島で高校を卒業した帆高は2024年、東京の大学へ進学するために再び上京します。かつて訪れた場所が水底へと沈んだ街で、保護観察が明けた彼は、坂道の上で祈り続ける天野陽菜と奇跡の再会を果たします。そこには「世界を狂わせてしまった」という拭えない罪悪感を抱きつつも、「僕たちは、大丈夫だ」とお互いの存在を肯定し合う、痛切で力強い希望の光が描かれていました。