今回、当誌は特別に撮影チームの秘蔵メイキング素材を入手した。そこには、本編の尺の都合上、泣く泣くカットされた未公開シーンの数々が収められていた。特に印象的なのは、主人公が深夜の厨房でひとり、出汁の取り方に苦悩する7分間におよぶ長回しのワンカットだ。セリフは一切ない。ただ炎の揺らめきと、鍋から立ち上る泡の音だけが響く。この幻の未公開シーンは、主人公の内面的な覚醒を描く重要な転換点となるはずだったという。
「あのシーンを削る決断は、身を切るより辛かった」。監督は取材に対し、苦渋の選択だったことを明かした。完璧を追求するがゆえに削ぎ落とされた未放映映像の存在が、かえって作品の奥行きを物語っている。