結論から明確に申し上げますと、花吐き病は医学界・科学界に実在しない完全な架空の疾患です。厚生労働省の指定難病リストや日本呼吸器学会の症例報告、さらには世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)を精査しても、人体から植物の花弁や蕾が発生・喀出されるといった症例記録は一件たりとも存在しません。
生化学的・解剖学的な観点から見ても、動物である人間の体内で光合成を必要とする高等植物の組織が芽吹き、開花することは生物学的に不可能です。それにもかかわらず、なぜYahoo!知恵袋やSNSで「花吐き病 実在」という検索が後を絶たず、実在する奇病であるかのような錯覚が広まったのでしょうか。その背景には、3つの決定的な要因が存在します。
第1に、吐血や喀血という現実の身体的苦痛を詩的に置換したリアリティです。結核などで口から血を吐く悲劇のヒロイン像は古典文学の定番ですが、花吐き病はその血液を「花弁」へとすり替えています。苦痛の描写が生々しいからこそ、読者の脳裏に現実めいた説得力を与えました。
第2に、インターネット特有の都市伝説化とミームの定着です。「かつて東欧の寒村で確認された」「とある奇病の隔離病棟に記録が残されている」といった、ネットユーザーによってまことしやかに付け加えられたフェイクの解説文が、まとめサイトやSNSを介して独り歩きした経緯があります。
第3に、後述する元ネタ漫画の存在を知らない若い世代が、二次創作の小説やイラストから直接この概念に触れ、「もともと伝承や医学界に存在する概念なのではないか」と誤認したケースが急増した点です。創作の枠組みを飛び越えて実在性が疑われるほど、その世界観の完成度が際立って高かったことの証左でもあります。