外科手術と聞くと、長期の入院生活や高額な医療費を連想しがちですが、本疾患の臨床パスは極めて効率的かつ安全に洗練されています。小児外科の入院期間と費用の実情を見ると、腹腔鏡下手術を選択した場合、術前の輸液補正期間を含めても入院期間は3〜5日程度で退院を迎えるケースが標準的です。
医療費に関しても、日本国内においては各自治体の「乳幼児医療費助成制度(子ども医療費助成)」が適用されるため、自己負担額は外来・入院ともに無料、あるいは1回あたり数百円程度に抑えられます。個室代(差額ベッド代)や病院の食事療養費の標準負担額を考慮しても、実質的な窓口支払いは数千円から数万円の範囲に収まります。
保護者が最も安堵するのが、術後ミルク再開の経過の早さです。幽門筋を切開した後の胃粘膜は傷ついておらず、胃の出口の物理的閉塞は手術の瞬間に解除されています。一般的な術後授乳プロトコルは以下のステップで段階的に進められます。
- 術後4〜6時間:麻酔からの完全覚醒を確認後、5%糖水や経口補水液を10〜20ml程度試飲。
- 術後12時間:薄めたミルクまたは母乳を20〜30ml授乳。
- 術後24時間:通常の濃度・量(40〜60ml)へステップアップ。
- 術後36〜48時間:自律的な自律授乳(欲しがるだけの通常量)へ復帰し、嘔吐がなければ退院判定。
術後数回、胃の麻痺性運動異常や残存する浮腫によって少量の吐き戻しが見られる場合がありますが、これは一過性の現象であり心配ありません。そして親御さんが最も気にかける肥厚性幽門狭窄症の再発と後遺症についてですが、適切に切開された幽門筋が再び異常肥厚して再発する確率は0.5%未満と極めて稀です。成長後に胃潰瘍や逆流性食道炎などの後遺症を残すこともなく、体重増加と離乳食の進展は健常児とまったく同一の軌道を描きます。