本作の実写化プロジェクトにおける最大の特徴は、ひとつのメディアで完結させず、連続ドラマ版で原作の中学時代を忠実に描き、映画版で10年後を描く完全オリジナルストーリーへと接続させた二段構えの構成にあります。この大胆な試みを支えたのが、細部まで計算し尽くされたキャスティングでした。
ドラマ版の主演を務めたのは、女子小中学生向けファッション誌『Seventeen』専属モデルとしても注目を集める月島琉衣(中学時代の高木さん役)と、是枝裕和監督の映画『怪物』で世界的な脚光を浴びた実力派・黒川想矢(中学時代の西片役)のふたりです。何百人規模のオーディションを勝ち抜いた若き才能は、からかいと照れが交錯する思春期特有の心理描写を、作為のない自然体な息遣いで演じ切りました。
そして10年の時を経た映画版では、母校に教育実習生として帰ってきた永野芽郁(高木さん役)と、同じく母校で体育教師として奮闘する高橋文哉(西片役)がバトンを引き継ぎました。大人になっても拭いきれない初恋の余韻と、教員という社会的立場との間で揺れる大人のもどかしさを、確かな演技力で体現しています。
このふたつの時代を唯一繋ぐ要石となったのが、田辺先生役の江口洋介です。ドラマ版ではふたりを時に厳しく、時に温かく見守る担任教師として登場し、映画版では教頭先生として西片の背中を静かに押す存在として鎮座しています。江口洋介という重厚な存在が一本の軸を通したことで、時間経過の説得力が飛躍的に高まりました。
映画版の脇を固める布陣も見逃せません。かつての同級生である中井役に鈴木仁、真野役に平祐奈、浜口役に前田旺志郎、北条役に志田彩良がキャスティングされ、それぞれが10年の歳月を経てどのような道を歩んでいるのかを示すことで、からかい上手の高木さん実写相関図は立体的かつ重層的な広がりを見せています。