宝塚歌劇団におけるトップコンビの退団には、それぞれ異なるタイミングで去るケースと、トップスターとトップ娘役が足並みを揃えて大階段を下りる「同時退団(添い遂げ退団)」の2つの形態が存在します。海乃美月が選んだ道は、まぎれもなく後者でした。
2023年9月に開かれた退団記者会見の記録を紐解くと、海乃美月は決断の瞬間について率直な言葉を遺しています。月組トップスター・月城かなとから「次の大劇場公演で卒業しようと思う」と打ち明けられた際、彼女自身も「私も同じ公演で一緒に卒業させてください」と即答した事実が明かされています。97期生として入団以来、数々の試練を乗り越えて実力派として遅咲きとも言えるキャリアを築き上げた彼女にとって、月城かなとというかけがえのないパートナーの存在こそが、表現者としての集大成を託す対象でした。
ファンの間で「れいこうみ」と親しまれた2人は、単なる舞台上のパートナーを超え、徹底したディスカッションと互いへの深い信頼によって芝居を構築する職人肌のコンビとして知られていました。宝塚関係者の証言によると、「海乃さんは自分の進退について、月城さんの背中を見届けること以外に考えていなかった」と語られており、妥協のない芝居作りを完遂した末の「美しき完全燃焼」こそが、海乃美月の退団理由の本質です。