広尾の街を歩けば、異国情緒あふれるカフェや邸宅の合間に、ひときわ落ち着いた佇まいを見せる建築が目に飛び込んでくる。老舗の高級スーパーマーケットを展開する株式会社明治屋が手掛けるこの施設は、商業施設不動産業の視点からも独自の立ち位置を確立してきた。その根底には、創業者の磯野計が掲げた「上質な食と暮らしを提供する」という志が今なお力強く脈打っている。
かつてニューヨークのデリ文化を日本に紹介し、ジョエル・ディーンらが築いた世界基準の食文化に共鳴したような審美眼が、館内の各店舗に息づく。ただ商品を並べるのではない。ライフスタイル・都市型グルメの先端を走りつつも、地域の顧客と深い信頼関係を紡いできた歴史こそが、この場所の最大の強みなのだ。