「体に優しいはずなのに、飲んだ後に胃が締め付けられるように痛んだ」という患者の食事記録を精査すると、驚くほど共通したNG食材のパターンが浮き彫りになります。弱った胃に対して攻撃性を発揮する食材の筆頭が、キノコ類(しめじ、エリンギ、椎茸)、海藻類、ゴボウや蓮根といった根菜類です。これらに含まれる強固な不溶性食物繊維は、人間の消化酵素では分解できず、胃は内容物を細かく砕こうとして過剰な蠕動運動と胃酸分泌を繰り返します。結果として、傷ついた胃壁を強酸性の胃液が直撃することになります。
さらに見落とされがちなのが、香味野菜と調味料が引き起こす化学的刺激です。身体を温めようとして生姜をすり下ろしたり、ネギや玉ねぎを多量に入れたりする調理法は、健常時の冷え対策には有効でも、胃粘膜がただれている状態では「傷口に消毒液を擦り込む」に等しい愚行です。生姜に含まれるジンゲロールや、ネギ類のアリシンは胃壁の血流を増やす反面、胃酸の分泌中枢を強烈に刺激するため、胃痛を抱えている局面では完全に排除しなければなりません。
また、スープの「とろみ」にも罠が潜んでいます。片栗粉による適度なとろみは冷めにくく喉越しを滑らかにしますが、油分を乳化させた濃厚な中華風白湯スープや、生クリーム・バターを多用したポタージュは最悪の選択肢となります。脂質は胃の排空機能を著しく阻害し、胃内滞留時間を4〜5時間以上にまで引き延ばします。これにより胃もたれ感は劇的に悪化し、就寝時の胃食道逆流症の直接的な引き金となるのです。