メガホンを取った藤井道人監督の手腕も、本作を傑作へと押し上げた決定的な要素だ。『新聞記者』や『余命10年』で魅せた、冷徹な社会批評眼とエモーショナルな映像美が、本作でも遺憾なく発揮されている。逃亡の舞台となる日本各地の四季折々の風景は、美しいと同時に、逃げ場のない孤独を際立たせる残酷な背景として機能する。
ドキュメンタリータッチの生々しいカメラワークと、緻密に計算された光と影のコントラスト。スクリーンから漂う焦燥感は、観客自身が追っ手から逃げ回っているかのような錯覚を抱かせる。映像の隅々にまで張り巡らされたディテールへのこだわりが、作品の品格を高めている。