ネット上やSNSでは、マグロの生態に関して事実と異なる都市伝説や極端な誤解が散見されます。生物学的な観点から、代表的な3つの誤解を正しく検証します。
誤解1:「止まった瞬間に即死する」という勘違い
「動きを止めた瞬間に心停止する」というイメージを持たれがちですが、実際には停止した直後に心臓が止まるわけではありません。正確には「停止することでエラへの酸素流入が絶たれ、数分間で徐々に低酸素症(窒息)に陥る」というプロセスを辿ります。釣り船に引き上げられたマグロが甲板で激しく暴れ回るのは、急激な酸欠に苦悶する生体反応です。
誤解2:「寝ている間は一切周囲が見えていない」という勘違い
先述の通り、マグロは睡眠中も完全に脱力して沈没しているわけではありません。前述の「半球睡眠」により、片方の脳と目は機能し続けています。もし完全な昏睡状態に陥れば水流が止まって沈下してしまうため、海流を感知しながら姿勢制御を行う最低限の知覚と遊泳運動は保たれています。
誤解3:「人工的な流水プールでも飼育できない」という勘違い
「どんな環境でもマグロは飼えない」と語られることがありますが、これも不正確です。水産試験場や近畿大学などの研究機関では、強力なジェット水流を発生させるドーナツ型水槽を用い、マグロ自身が力強く羽ばたかなくとも、流れてくる水が自動的に口からエラへと通過する環境を人工的に再現することで、個体の安定した保護や生態研究に成功しています。