凶器として使われたのは、当時農業用除草剤として広く流通していた「パラコート(ジクワット混入製剤含む)」でした。パラコートは植物を瞬時に枯らす強力な農薬であり、人間にとっても極めて危険な猛毒です。
パラコート中毒の恐ろしさは、「有効な解毒剤が存在しない」という点にあります。経口摂取した場合の致死量はわずかティースプーン1杯(約5〜10ml程度)とされ、体内に入ると活性酸素を大量に発生させて細胞を破壊します。特に肺に毒素が蓄積しやすく、肺線維症や肺水腫を引き起こして呼吸困難に陥るほか、肝臓や腎臓などの多臓器不全を併発します。
被害者たちは毒を口にした直後、激しい嘔吐や胃の痛みに襲われ、意識が明晰なまま数日から数週間にわたって呼吸困難と激痛に苦しみながら命を落としました。そのあまりの残酷さは、医療関係者や捜査員にも強い衝撃を与えました。