いま医学界が最も注視しているのは、乳化剤が腸管粘膜に与える物理的・生物学的なダメージである。人間の腸壁は、外敵や有害菌の侵入を防ぐために強固な粘液層(ムチン層)で覆われている。界面活性剤である一部の乳化剤は、食器用洗剤が油汚れを溶かすのと同様の原理で、この保護粘膜を菲薄化させてしまう性質が実験で確認されている。
粘膜が薄くなると何が起きるのか。腸壁を守るバリアが崩壊し、腸内細菌叢のバランスが劇的に崩れる「ディスバイオーシス」が引き起こされる。さらに、細菌そのものやその毒素が腸粘膜の細胞に直接接触することで、持続的な微小炎症が発生。これがクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患 (IBD)の発症や再燃、さらにはリーキーガット症候群(腸漏れ)の引き金になり得ると指摘されている。微量であっても毎日のように摂取し続けることによる蓄積的な影響は、従来の毒性試験では見落とされてきた死角だ。