長期保存した米を炊いた際、「芯が残るような硬さがある」「表面がパサパサして粘りがない」と感じる現象には、穀物化学の観点から明確な根拠が存在します。備蓄米がパサつく決定的な理由は、収穫後の時間経過によって米の細胞壁を取り囲むペクチン質が硬化し、デンプンの親水性が著しく低下することにあります。新米の水分含有量が概ね15%前後で保たれているのに対し、常温で1年以上放置された米は12%前後まで干からびてしまい、通常の水加減では中心部まで水分が浸透しきらないのです。
さらに深刻なのが、保管期間中に発生する脂質酸化です。精米された白米の表面には微量の米ぬかや脂質が残存していますが、これらが空気中の酸素や紫外線に触れることで酸化し、「ヘキサナール」と呼ばれる特有の揮発性アルデヒドを生成します。これこそが、食欲を削ぐ「古米臭」の本体です。
現在流通する長期備蓄米の賞味期限と現在の風味を追跡調査した食品分析データによると、密閉脱酸素パック加工されていない一般的な精米袋の場合、常温保存では製造から約6ヶ月を境に遊離脂肪酸度が急上昇し、風味の官能評価スコアが約35%低下することが確認されています。2024〜2025年当時に購入し、パントリーに眠らせたまま2026年を迎えた米は、まさにこの科学的変質がピークに達している状態といえます。