身長272cmに達したワドロー氏の命は、あまりにも短く儚いものでした。彼が息を引き取ったのは1940年7月15日、わずか22歳5か月という若さでした。多くの人々が「巨大化による心不全や内臓破裂」を死因だと想像しがちですが、直接的な引き金となったのは、日常的な足の傷から生じた感染症でした。
巨体を支えるため、ワドロー氏の足首には特製の金属製添え木(ギプス器具)が常に装着されていました。過大な体重によって末梢の血液循環が極度に低下していたうえ、神経障害を併発していたため、足先の痛覚が極めて鈍くなっていました。巡業先での滞在中、添え木が擦れてできた水ぶくれが破れ、靴擦れから細菌が侵入。本人が激痛に気づいたときには既に化膿が進み、重篤な敗血症を引き起こしていたのです。
現地の医療チームは緊急輸血や抗生剤の投与を試みましたが、当時はペニシリンが一般普及する直前の時代でした。高熱が数日間続き、意識が混濁する中で彼は最期を迎えました。最期の病床で付き添う家族に対し、彼は自らの手記や談話で「式典に行けなくて申し訳ない」と仕事仲間を気遣う言葉を残したと伝えられています。
医療関係者の臨床報告によると、極端な高身長を伴う巨人症患者には共通の構造的リスクが存在します。心臓は全身へ血液を送り出すために過剰な圧力を強いられ、常に心肥大のリスクにさらされます。さらに、数メートルもの高さから足先まで血流を循環させることは難しく、皮膚の壊死や感染症に対する免疫防御が破綻しやすいのです。長身であることは、生物学的に莫大な代謝コストと生命危機を背負うことと同義でした。