なぜ、これほど交通の便が限られた高山地帯の美術館へ人々が足を運ぶのでしょうか。その根底には、既存のホワイトキューブ(白い展示室)では絶対に味わえない、圧倒的な開放感と作品のダイナミズムがあります。
1981年に開館した美ヶ原高原美術館は、神奈川県箱根町にある国内初の野外彫刻美術館「彫刻の森美術館」の姉妹館として誕生しました。構想の根底にあるのは、「大自然の雄大なパノラマと、人間の精神が生み出した造形芸術の共鳴」です。約4万坪(約13万平方メートル)におよぶ緩やかな草原の斜面には、世界各国の著名アーティストによる約350点の現代彫刻が常設展示されています。
都会の美術館のように順路に縛られることはありません。360度の大パノラマには北アルプス、浅間山、美ヶ原のシンボルである王ヶ頭が連なり、眼下には時折ドラマチックな雲海が広がります。太陽の光線角度、流れる霧、吹き抜ける高原の風によって、同じ彫刻であっても一瞬ごとに表情を劇的に変えていきます。自然と芸術が一体となったこのサイトスペシフィックな体験こそが、多くのリピーターを惹きつける最大の引力です。