博多銘菓鶴乃子の歴史と経緯を辿ると、明治38年(1905年)創業の老舗菓子舗「石村萬盛堂」の創業期に突き当たります。博多名物として古くから親しまれていた「鶏卵素麺」は、卵黄のみを大量に使用するため、どうしても卵白が余ってしまうという製造工程上の課題を抱えていました。
創業者である石村善太郎氏は、この余剰となる卵白の有効活用を模索する中で、当時日本に伝来したばかりの南蛮菓子・マシュマロに着目しました。試行錯誤の末、泡立てた卵白に糖蜜を加えてふっくらと仕上げた生地で、風味豊かな黄味餡を包み込むという独創的な和洋折衷菓子を完成させました。これが、鶴の卵を模した銘菓「鶴乃子」の誕生です。
さらに石村萬盛堂は、日本の贈答文化に大きな足跡を残しています。それが「ホワイトデー発祥の真相」として語り継がれるエピソードです。昭和52年(1977年)、三代目社長の石村善悟氏が少女雑誌の「男性からバレンタインデーのお返しがないのは不公平」という投稿を目にしたことをきっかけに、「バレンタインデーに君からもらったチョコレートを、僕の優しさ(白いマシュマロ)で包んでお返しするよ」というコンセプトを立案しました。翌1978年3月14日、「マシュマロデー」としてキャンペーンを展開した試みが、現在の国民的行事であるホワイトデーへと発展していった事実は、同社の先進的な発想力を雄弁に物語っています。