山手線の内側や主要ターミナル駅周辺では、カプセルホテルであっても1泊5,000円から8,000円が相場となった。その環境下で、なぜ「1980円」という破格の設定が維持できるのか。その背景には、徹底的に贅肉を削ぎ落とした「機能のアンバンドル化(分離)」が存在する。
まず注目すべきは、立地選定の妙だ。施設が位置する台東区下谷の格安宿泊施設群は、上野駅まで徒歩圏内でありながら、下町の住宅街が混在するエリアである。最寄りの1泊1980円ホテルTokyoの入谷駅からは徒歩数分という好アクセスを誇りつつも、銀座や新宿のような超一等地と比べて地価・賃料を大幅に抑制できる。この固定費の低さが、価格破壊の土台となっている。
さらに、サービス構造の徹底した簡素化が挙げられる。一般的なホテルが宿泊費に内包している歯ブラシ、バスタオル、館内着、髭剃りなどのアメニティ類は一切含まれていない。客室も木製や合板で組まれたシンプルな二段ベッド型のスリーピングポッドであり、テレビなどの豪華な電化設備は排されている。「寝床とコンセント、シャワーのみを提供する」という極限のミニマリズムを貫くことで、人件費とランニングコストを限界まで圧縮しているのだ。