山田五十鈴の名を昭和から平成の幅広い世代に決定づけたのが、朝日放送・松竹制作のテレビ時代劇『必殺』シリーズでした。1979年の『必殺からくり人』への出演を経て、1981年スタートの『新・必殺仕事人』から登場した「三味線屋のおりく」役は、彼女のキャリアにおける最大の当たり役の一つです。
裏稼業の元締格としてチームを束ね、愛弟子であり育ての親でもある「三味線屋の勇次」(中条きよし)と共に仕事を行う姿は、妖艶でありながら近寄りがたい凄みを放っていました。普段は温かみのある三味線師匠として長屋に溶け込みつつ、裏では撥(ばち)に仕込んだ刃や三味線の三の糸を用いて標的を一瞬で仕留める冷徹さのギャップは、視聴者に強烈な衝撃を与えました。
映画や舞台の第一線に立つ大女優が、当時「一段低く見られがち」だった民放の連続テレビ時代劇にレギュラー出演すること自体が異例中の異例でした。現場での立ち居振る舞いや三味線の本物の撥さばきは現場の空気を引き締め、必殺シリーズを単なるエンタメにとどまらない骨太の人間ドラマへと引き上げる原動力となったのです。