菅氏が引退に際して最も心血を注いだのが、自身の牙城であった衆院東京18区の後継者選定でした。菅氏が後継として白羽の矢を立てたのが、前武蔵野市長の松下玲子(まつした れいこ)氏です。
松下氏は東京都議会議員や武蔵野市長を歴任し、リベラル層からの支持が厚い実力派政治家です。菅氏にとって松下氏は、地元行政を熟知し、市民運動から草の根で支持を広げてきた自身の政治哲学を最も色濃く継承する存在でした。市長辞職に伴う賛否両論を巻き込みながらも、菅氏は後継指名を明確にし、後援会組織の引き継ぎを全面的にバックアップしました。
「地盤・看板・鞄」を世襲の親族に譲る世襲議員が批判を浴びる現代の政治シーンにおいて、血縁関係のない女性首長経験者に地盤を譲った選択は、菅氏らしい市民派の幕引きとして評価される一方、保守層との間で熾烈な議席争いを演じる起点にもなりました。