人々が長時間の待ち時間を厭わずに萬来亭へ足を運ぶ最大の動機は、唯一無二の看板メニューにあります。巷の類似料理とは一線を画すその仕上がりには、緻密な調理技術と計算された味覚の黄金比が存在します。
横浜中華街の萬来亭で注文率9割を超えるのが「上海焼きそば」です。一般的な細麺や蒸し麺とは根本から異なり、まるでうどんや生パスタを彷彿とさせるストレート極太麺を使用しています。茹で上げられた麺は、強火の中華鍋で中国溜まり醤油(老抽)やオイスターソースをベースとした秘伝タレと一気に絡められます。具材は細切り豚肉と青菜のみという極めて潔い構成でありながら、口に含んだ瞬間に広がる芳醇な醤油の香ばしさと、小麦の風味が凝縮されたモッチリとした噛みごたえは鮮烈です。炭水化物を食べている実感を極限まで高めてくれるこの一皿は、製麺所直営の強みを最大限に活かした傑作といえます。
対する名古屋市緑区の萬来亭で主役を張るのは、東海エリア屈指の濃度を誇る「家系ラーメン」です。豚骨と鶏ガラを大量に炊き出し、骨の髄まで旨味を抽出したスープは、どっしりとした粘度と力強い豚骨のパンチを備えています。そこにキレのある醤油ダレ(かえし)と上質な鶏油(チーユ)が合わさり、スープを一口啜るだけで濃厚な旨味が口内を支配します。麺は短めでウェーブがかった中太ストレート麺を採用しており、濃厚スープをしっかりと持ち上げます。トッピングには家系王道のチャーシュー、ほうれん草、大判海苔に加え、愛らしい「うずら卵」が添えられているのも名古屋緑区店の大きな特徴です。白米との相性が極限まで計算し尽くされており、ライス片手に麺を啜る背徳的な歓びが多くのリピーターを生み出し続けています。