梟書茶房を象徴する最大のギミックが、店内にずらりと並ぶ「シークレットブック」の仕組みです。陳列されている約2,000冊の本は、すべてオリジナルのブックカバーで完全に包まれており、タイトルも著者名も一切明かされていません。
購入の判断材料となるのは、表紙に印字された柳下恭平氏らによる「推薦文・レビュー」と、固有の通し番号のみです。読者は普段なら自分が選ばないかもしれないジャンルや作家と、「言葉の断片」だけを頼りに出会うことになります。さらにユニークなのが、本を読み終えると巻末に「次に読むべきおすすめの本の番号」が記されているリレー形式の設計です。この偶発的な出会い(セレンディピティ)が、知的好奇心を強く刺激します。
もうひとつの心憎い演出が、梟書茶房の伝票代わりに手渡される「鍵」の秘密です。注文を終えると、店員からテーブル番号が刻印されたアンティーク調の真鍮の鍵が渡されます。退店時はこの鍵を持ってレジへと向かい、会計を済ませるというフローです。「物語の扉を開け、再び現実へと帰る」という一連のストーリーテリングが細部まで貫かれており、日常から切り離された非日常感を強く印象づけます。