ファンやリスナーの間で長年議論が交わされてきたのが、歌詞の結末(ラスト)と少女の迎えた運命です。原作の『人魚姫』では、王子が別の女性と結婚してしまい、人魚姫は王子を短剣で刺して海へ戻るか、自らが海の泡となって消えるかの二者択一を迫られます。
『深海のリトルクライ』の歌詞全文とMVの演出を仔細に追っていくと、少女は少年の幸せを願いながらも、自らの存在が消えゆく運命を受け入れています。注目すべきは、終盤にかけて展開される「泡になって消える」ことの描かれ方です。
映像作家・植草航氏によるMVでは、記号化された魚や波のメタファー、色彩の移ろいが緻密に計算されています。少女は自らの声を奪った理不尽な世界を呪うのではなく、最後に少年へ向けて「かすかな音」「祈り」を残そうとします。泡となって消滅することは完全な敗北や死ではなく、「他者への一方的な執着」を手放し、「純粋な祈り」へと昇華された瞬間として描かれているのです。この結末の多層性こそが、sasakure.UKボカロ名曲と称される最大の理由といえます。