映画化の王道ジャンルといえば、息をのむトリックと人間ドラマが交錯するミステリーです。とりわけ東野圭吾の映画化小説は、映像界において別格の存在感を誇ります。
直木賞を受賞した『容疑者Xの献身』では、天才数学者・石神の悲哀に満ちた献身を堤真一が圧倒的な説得力で熱演。福山雅治演じる湯川学との静かな頭脳戦を、雪山での対峙など映画オリジナルの舞台装置を交えて劇的に描き切りました。『マスカレード・ホテル』や『白夜行』など、緻密なプロットと人間の業を描いた作品群は、映画界のヒットメーカーとして確固たる地位を築いています。
また、どんでん返し小説の映画化における真相の描き方には、映像特有の叙述トリックという難関が立ちはだかります。乾くるみの『イニシエーション・ラブ』では、「映像化不可能」と言われた最後の2行の衝撃を、小道具の配置や時代背景の細やかな演出によって見事にクリア。ラスト数分で世界が反転する快感を観客に味わわせ、大きな話題を呼びました。