ネット上には「小林稔侍はすでに引退したのか?」という疑問も溢れていますが、公式な引退発表は一切行われていません。ここには、昭和の映画・演劇界を生き抜いてきた名優たちに共通する確固たる美学が存在します。
現代のエンターテインメント業界では、タレントが活動を休止または引退する際、大々的な引退会見やSNSでの声明文発表を行うケースが一般的です。しかし、小林稔侍のような叩き上げの俳優にとって、「俳優とはオファーがあって初めて成立する仕事であり、引き際を自ら声高に宣言するものではない」という職人堅気の哲学があります。
求めてくれる作品や役柄があり、自身の体力と精神がそれに応えられる状態であれば現場に立つ。そうでなければ静かに佇まいを整えて暮らす。この「フェードアウトを恐れない自然体」こそが、小林稔侍の選択です。
また、プライベートを過剰に切り売りしない姿勢もネットの憶測を招く要因となりました。小林は若い頃からバラエティ番組への露出を極力控え、私生活をマスコミの好奇の目に晒すことを嫌いました。一般女性である妻との平穏な家庭生活を何よりも大切に守り抜いてきたため、公式発信が少ない空白部分に、ネット特有の無根拠な死亡説や重病説が入り込んでしまったのです。