激しい係争地となったのが、山岳地帯のトレンティーノと要衝港湾都市トリエステだ。これらの地域を長年支配していたのは名門ハプスブルク家のオーストリア=ハンガリー帝国である。イタリア系住民が多数派を占める都市部と、スラブ系やドイツ系が混在する後背地。この複雑な人口動態を無視し、単一民族による支配を強行しようとしたことが決定的な亀裂を生んだ。
アルプスの峻険な山岳地帯では、文字通り氷と岩を血で染める過酷な山岳戦が繰り広げられた。要塞化されたトレンティーノの山々を巡る攻防は、近代兵器の実験場と化し、膨大な人命を呑み込んでいく。一方、アドリア海の真珠と称されたトリエステ港の帰属は、地中海貿易の生殺与奪の権を握る経済的死線でもあった。