この歴史的瞬間を、ABEMAのマルチアングル中継や囲碁・将棋チャンネルの生放送が克明に記録していた。カメラがズームしたのは、盤面を見つめる藤井の指先の震えと、視線のわずかな揺らぎだ。長考に沈むこと実に1時間42分。扇子を弄ぶ音すら途絶えた沈黙の空間で、どれほど深い変化が脳内スクリーンに描かれていたのか。
中継画面に映し出されるAIの推奨手をよそに、独自の読み筋を深掘りしていく姿は視聴者を釘付けにした。おやつや勝負メシの話題がSNSを賑わす一方で、ひとたび盤上に戻れば獣のような集中力で相手の隙を伺う。ファンが目撃したのは、デジタル時代のツールを完全に血肉化しながらも、最後は己の肉体と精神だけで決断を下す生身の人間のドラマだった。