火野葦平の原作は、その圧倒的なドラマ性ゆえに、昭和の日本映画界において幾度となく映画化されてきました。佐伯清監督による1954年の藤田進版を皮切りに、山下耕作監督・石井輝男監督が手掛けた東映版、加藤泰監督による松竹・東映版など、時代を代表する巨匠たちがメガホンを取り、日本映画史を代表するトップスターたちが玉井金五郎を演じています。
なかでも1960年代から70年代にかけての高倉健、中村錦之助(後の萬屋錦之介)、渡哲也、菅原文太といった名優たちが演じた金五郎像は、それぞれが強烈な個性を放ち、任侠映画・アクション映画の歴史に燦然と輝く金字塔となりました。
特筆すべきは、村田英雄が単に主題歌を歌う歌手の立場にとどまらなかった点です。彼は映画の劇中に重要な役どころとして出演を果たしただけでなく、東宝歌舞伎や明治座などの劇場舞台において、自ら玉井金五郎役を演じて座長公演を大成功させました。
映画のスクリーンで高倉健や菅原文太が見せる孤高の殺陣と、場内に鳴り響く村田英雄の重低音ボーカル。視覚と聴覚が完璧に融合した瞬間、観客は劇場の暗闇のなかで熱狂的なカタルシスを味わいました。村田英雄という肉体そのものが『花と竜』のアイコンとなったことで、楽曲の説得力は他の追随を許さない高みへと到達したのです。