神宮と神社の関係性を理解する第一歩は、「神社」という言葉が神道の祭祀施設全般を指す包括的な名称であると把握することです。すべての神宮は神社の一種ですが、すべての神社が神宮を名乗れるわけではありません。この社号の違いを決定づけているのが、祀られているご祭神の属性と皇室との結びつきです。
一般的な神社では、地域を守護する産土神(うぶすながみ)や特定の産業を守る神、自然神など多様な神霊が祀られています。これに対して神宮を名乗る神社は、皇室の祖先である「皇祖神(こうそしん)」や歴代の天皇、または皇室と極めて縁の深い神剣などの神宝をご祭神としている点に決定的な違いが存在します。
なかでも三重県伊勢市に鎮座する「神宮(通称:伊勢神宮)」は別格中の別格とされます。正式名称には地名が付かず、単に「神宮」の二文字のみです。皇室の祖神であり日本国民の総氏神とされる天照大御神(内宮)と、衣食住の守護神である豊受大御神(外宮)を祀り、全国約8万社の本宗(ほんそう)として位置づけられています。一般の神社と伊勢神宮の間には、単なる規模の大小を超えた歴史的・霊的な序列の差が厳然として横たわっています。
明治以降に創建された社寺のなかにも神宮号を持つものがあります。代表例が東京都渋谷区に鎮座する明治神宮です。1912年に崩御した明治天皇と昭憲皇太后の遺徳を偲び、国民の強い熱望によって1920年に創建されました。全国から献木された約10万本もの樹木で人工林を造成した明治神宮の由緒は、国家の近代化を成し遂げた天皇への崇敬を象徴する近代神宮の代表例といえます。
現在の神社本庁の規定においても、新たに神宮の社号を名乗る、あるいは改称するためには厳格な詮衡と承認手続きが必要と定められています。由緒正しい皇室とのつながりが歴史的に実証され、かつ皇室の勅許や崇敬の歴史が認められない限り、どれほど崇敬者が多い大寺社であっても神宮を名乗ることは許されません。