『クラブ順子』の重厚な扉の向こうでは、幾度となく歴史の転換点が静かに紡がれてきた。昭和から平成にかけての政財界人脈は圧巻の一言に尽きる。歴代首相や大手企業のトップたちが心を許し、本音を漏らす場所――それが彼女のサロンだった。
「大事な話ほど、声は低くなるのですよ」。そう微笑む彼女の記憶には、公には決して明かされない数々の密室劇が刻まれている。派閥抗争の夜、大型M&Aの舞台裏、あるいは失意の底にあった経営者の涙。聞き役に徹し、一切の口外を断つ固い口堅さこそが、最高幹部たちの安全地帯となり得た理由だ。単なる社交場にとどまらない「真の人間関係」を構築する技術は、現代のビジネスパーソンにとっても貴重な示唆に富んでいる。