時代が下るにつれ、暖簾ごとの独自解釈が広がり、境界線は曖昧になった。そこで業界の基準づくりが必要となったのだ。
東京都麺類協同組合の史料によれば、昭和の高度経済成長期以降、器と海苔の有無によってメニューを整理する動きが一般化していった。竹ざるを使い海苔を散らしたものを「ざる」、セイロやプラスチックの器に盛った海苔なしのものを「もり」とする区分は、広範な消費者に分かりやすく提供するための実用的な工夫であった。
一方で農林水産省が推進する伝統的食文化の保護継承事業においても、蕎麦は地域固有の職人技術と連動した「和食文化」の象徴として位置付けられている。単なる外食の選択肢を超えて、器の素材や薬味の調合にいたるまで、歴史的な物語を宿した文化財として再評価が進む。