この妖艶な名演の裏には、鬼才・深作欣二による壮絶な現場のリアリティが存在していた。当時の撮影現場を知るスタッフや関係者の証言によると、クライマックスの江戸城炎上シーンではCGを一切使わず、本物の炎をスタジオ内に燃やして作られたという。室内温度は灼熱と化し、出入り口が制限された空間でキャスト陣は命がけの演技を強いられた。
佳那晃子自身も、極限の緊張感の中でカメラの前に立った。着物が焦げ、煙が充満する過酷な環境下で、深作監督は一切の妥妥を許さなかった。「本物の危機感だけが本物の表情を生む」という監督の執念に応えるべく、彼女は身を削るような集中力でガラシャの狂気を演じ切った。この命がけの撮影秘話こそが、画面越しにも伝わる迫真の存在感の源泉なのだ。