過去に痴漢冤罪で無罪を勝ち取った裁判例を精査すると、共通する勝訴の要因は「初動における一貫した否認」と「客観的状況の緻密な再現」にあります。自著や手記で当時の過酷な取り調べを告白した冤罪被害者たちの証言によると、警察の取調室では「認めて示談すれば今日中に帰れる」「否認を続ければ何ヶ月も出られないぞ」という心理的揺さぶり(自白の強要)が執拗に行われます。
日本の刑事手続上、逮捕から勾留決定までの最大72時間は、家族との面会すら制限される孤立無援の状態です。この期間に捜査官が作成する「供述調書」に一度でも署名・押印してしまうと、裁判でそれを覆すことは事実上不可能です。無罪判決を得た事案の多くは、被疑者が弁護士のアドバイスを忠実に守り、不利な調書へのサインを拒否し続けたケースです。取調官に対する最大の対抗手段は、憲法第38条で保障された「完全な黙秘権の行使」に他なりません。