生ドーナツブームの原点を語る上で欠かせない存在が、福岡発の超人気ベーカリー「アマムダコタン(AMAM DACOTAN)」のオーナーシェフ・平子良太氏が手掛けたドーナツ専門店「アイムドーナツ(I'm donut ?)」です。
平子氏がパン作りの発想から生み出したこのドーナツは、2022年春に東京・中目黒に1号店をオープンするやいなや、連日2〜3時間待ちの大行列を記録しました。ブランド名にある「I'm donut ?(私は本当にドーナツですか?)」というアイロニカルな問いかけの通り、「従来のドーナツの概念を覆す食体験」がSNS世代の心へ強烈に刺さったのです。
ブームが急速に広がった背景には、現代の消費者心理とメディア構造の合致がありました。
第一に、「タイパ(タイムパフォーマンス)志向と情緒的充足の融合」です。日々の忙しさの中で、数百円という手の届く価格で圧倒的な多幸感と非日常感を味わえる「プチ贅沢」として機能しました。第二に、「動画映え(シズル感)の強さ」です。指で持っただけで沈み込む柔らかさや、クリームが溢れ出す断面の動画がTikTokやInstagramで瞬く間に拡散され、視覚的な欲望を刺激し続けました。