家庭内の修復が進む一方で、職業人として支払った代償は極めて甚大でした。特に問題視されたのは、不倫行為そのもの以上に、公開前のアニメ音源を外部の第三者に聴かせたとされる「コンプライアンスおよび守秘義務違反」の側面です。これにより、鈴木さんは築き上げてきた主要ポストを次々と失うこととなりました。
当時、鈴木さんが退くこととなった降板キャラクターの代表例が、『東京リベンジャーズ』のドラケン(龍宮寺堅)役です。作品の屋台骨を支える人気キャラクターでしたが、第2期以降は福西勝也さんに交代。さらに『魔王学院の不適合者』の主人公アノス・ヴォルディゴード役も梅原裕一郎さんへ、『ULTRAMAN』の東光太郎役も前野智昭さんへそれぞれバトンタッチされました。
加えて、彼が約12年間にわたりフロントマンとして情熱を注ぎ、数々のアニメ主題歌をヒットさせてきた音楽ユニットOLDCODEXも、2022年5月31日をもって正式に解散を発表しました。看板IPの主役座と音楽活動という「表現の両輪」をもぎ取られた事実は、キャリアにおいて過去最大の痛手であったことは間違いありません。
その中にあって唯一の光明となったのが、京都アニメーション制作の『Free!』シリーズでした。制作委員会は「橘真琴というキャラクターは鈴木達央氏の芝居と不可分である」という趣旨の異例の声明を発表し、最終章となる劇場版まで役を続投させました。この現場サイドの判断が、後の役者生命をつなぎ止める大きな足がかりとなったのです。