当時、多くのメディアが「多摩川氾濫」と速報を打ったため、堤防を水が越えて街が沈んだと誤解している人は今なお少なくありません。しかし、武蔵小杉駅周辺を襲った被害の本質は、河川の氾濫ではなく内水氾濫(ないすいはんらん)でした。
川崎市が公表した検証報告書によると、記録的な豪雨により多摩川の水位が急上昇した結果、市内から川へ雨水を排出する「山王排水樋管(さんのうはいすいひかん)」から、本流の水が逆流。下水管・雨水管の許容量をオーバーした濁流がマンホールや排水溝から地上へ噴き出し、武蔵小杉駅南東部を中心に大規模な冠水を引き起こしました。
この浸水被害で最も深刻な打撃を受けたとして特定・報道されたのが、駅前にそびえ立つ地上47階建てのタワーマンション「パークシティ武蔵小杉 ステーションフォレストタワー」です。敷地周辺に押し寄せた濁流は、スロープなどを伝って地下階へ一気に流入。建物の心臓部である地下電気室が水没したことで、受変電設備が壊滅的なショートを起こし、全棟停電・全館断水という未曾有の事態へ追い込まれることになりました。