馬頭琴は、モンゴル語で「モリンホール(Morin Khuur)」と呼ばれます。「モリン」は馬、「ホール」は弦楽器を意味し、その名の通り棹(ネック)の先端に美しい馬の頭部が彫刻されているのが最大の特徴です。台形の木製共鳴胴に2本の弦が張られたシンプルな造りでありながら、チェロにも匹敵する豊潤で厚みのある響きを生み出します。
楽器の最大の特徴は、「馬の毛」が音作りの根幹を担っている点です。バイオリンなど西洋の弦楽器がスチール弦やナイロン弦を用いるのに対し、馬頭琴は2本の主弦そのものが数百本もの馬の尾毛を束ねて作られています。高音弦(細い弦)には雌馬の尾毛を約100〜130本、低音弦(太い弦)には雄馬の尾毛を約130〜150本束ねるのが伝統的な製法です。
この馬の毛同士が擦れ合うことで、倍音を豊富に含んだあたたかくもスモーキーな響きが生まれます。その高い芸術性と文化的価値が認められ、2003年に宣言されたのち、2008年にはユネスコ無形文化遺産の人類の口承及び無形遺産の傑作として正式に登録されました。